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  • 執筆者の写真compactagri

野菜の病気 原因と対策:ナス

更新日:2021年8月23日


ナスは高温性の野菜で夏の暑さにも雨にも強いため、比較的作りやすい野菜です。栽培期間は6月〜10月中旬までと長く、長期間収穫を楽しめますが、一方で栽培期間が長いと病害虫の被害も受けやすくなります。特に連作障害も受けやすいため、しっかりとした栽培計画や畑の使い方が大切です。また多肥性のため、肥料切れにも注意が必要です。水が不足すると生育不良で収穫量が減り、果実のツヤも悪くなります。日当たりの良く水分の多い肥沃な土壌で育てていきましょう。


ナスがかかりやすい病気と症状・原因

茎、葉、花、根、実のあらゆる箇所で病気が発生します。土壌感染するような病気が多いため、感染を広げないためにも早期発見が大切になります。


【病気によく見られる症状】葉が緑のまましおれる、葉が枯れる、葉にモザイク状の模様が出る、葉や実に水しみができる、葉に白い粉がつく、葉に褐色の小さな斑点ができる など


これらの症状が出てきたら何かしらの病気の可能性が高く対策が必要になります。


青枯病(あおがれびょう)



ナス、トマト、ピーマン、ししとう、パプリカなどナス科の野菜に多い細菌性の土壌病害。

発生条件は土壌温度が20度以上の多潅水。6〜7月の梅雨時期に多く発生します。


症状:気温の高い日中に上の葉から緑色のまま突然しおれだし、最初のうちは夜間や曇りなど気温が下がると回復します。その繰り返しが2−3日続き、葉がしおれ始めてから1週間ほどで株が枯死してしまう非常に進行の速い病気です。株は青さを残したまま枯死します。また周りの株への伝染も非常に速く、病気が出ると被害が大きくなります。茎や根を切ってみると維管束は褐色に変異していて、断面から乳白色の細菌泥が出てきます。この細菌泥は他の株につくと感染するので注意が必要です。


原因:細菌が原因です。病原となる細菌は土壌伝染性病原菌で、前作した作物に青枯病が出ていた場合はその残さの中で病原菌が長期間(2〜5年)生存しています。病原菌が残る土壌では、定植や芽かき、摘芯などの栽培管理の中で発生するあらゆる傷から病原菌が進入し感染していきます。また、感染した野菜の剪定や手入れをした道具からも他の株へ感染します。連作を繰り返した痩せた土地では土壌内の微生物バランスが崩れ病原菌が増殖します。


対策:感染初期でしおれた状態が葉の上部だけであれば薬剤で治せる場合もありますが、進行と周囲への感染も速いため早めに抜き取り処分する事が多いです。前述の通り残さに細菌が残るため、抜き取った株は畑に残さず廃棄しましょう。


対策薬剤:収穫前に適正な量と回数であれば人体への影響はほぼないと言われています。

バリダシン液剤5 散布後に茎葉から吸収され、導管内の細菌増殖を抑えます。発病を7〜14日間遅らせる効果があるため、処理したことで収穫期間を1〜2週間伸ばすことができ収穫量を上げることが期待できます。

予防策

◆接ぎ木栽培

青枯病抵抗性の台木(台太郎、トナシム等)を使った接ぎ木苗で栽培する事で病気発生予防が期待できます。

◆土壌消毒

青枯病が多発している土地では土壌消毒(クロルピクリンくん蒸剤バスアミド微粒剤など)が必要な場合もありますが大掛かりになるため家庭菜園では現実的ではありません。

◆土壌温度の上昇を防ぐ

土壌温度20度以上が発生条件なので、敷きわらマルチやシルバーマルチで地温上昇を防ぐことも有効です。

◆農作業に使用した道具の洗浄や消毒

剪定や耕運に使った道具からも感染します。使用後は洗浄と天日干しで消毒しましょう。

◆連作を避けた栽培計画を立てる

作物の残さに含まれる病原菌が原因となるため、ナス科作物の連作を避けた栽培計画を立てることで防ぐ事ができます。

◆強い土づくりを心がける

堆肥、木炭、米ぬかなどミネラルや有機物をしっかり土に入れ込み、良質な微生物が多い病気に強い土づくりも予防に重要です。



半身萎凋病(はんしんいちょうびょう)



ナス、トマト、ピーマン、パプリカなどナス科の野菜に多い真菌性(カビ)の土壌病害。

ナス科の野菜以外には白菜、イチゴ、大根などに発生することもあります。

梅雨や秋雨など曇天続きの多湿時期、気温が高温過ぎない季節に発生しやすい病気です。

土壌温度は22〜26度で発生しやすいため、秋に病気が発生した場合は気温の低下に伴い自然に回復する場合もあります。


症状:葉や株の半身が黄色にしおれます。初めは株元近く片側の枝葉から症状が現れ、葉脈と葉脈の間が黄色に変色し葉のふちから上方へ巻き上がってきます。だんだんと葉全体に広がっていき、徐々に上方の枝葉にも同様の症状が広がっていきます。さらに進行すると株全体の葉がしおれて株が枯死します。病気の株を切ってみると、病気に冒された側の維管束は茶褐色に変色していることが確認できます。


原因:真菌(カビ)が原因で、連作により発生します。土壌内の病原菌が根から導管内に侵入し導管を通じて植物の上部へ移動し、導管が集中する部分に定着し導管を塞ぐため半身萎凋病の症状が現れます。病原菌は収穫後の残さ、落葉した葉や枯死株の中で菌核形成して土壌に入り込み、胞子が越冬し翌年に病気が再発します。菌糸や胞子は3〜5年、菌核は10以上も土壌中で生存すると言われており、収穫物の残さなどから伝染する以外にも、長くつや耕運機などから持ち運んでしまった汚染土壌からも伝染します。また、豪雨などにより移動してきた汚染土壌も原因になります。土壌中の菌核の密度が高いほど発生率が高くなります。


対策:感染初期であれば薬剤で治せる場合もあるため使用を検討してください。病気が進行していたり他株への感染が広がっている場合は株を抜き取り処分しましょう。その場合は残さに菌が残っているため、抜き取った株や枝葉は畑の外に出して廃棄処分してください。


対策薬剤

ベンレート水和剤 水稲・野菜・果樹などの幅広い作物に使用でき、茎葉の病害、貯蔵病害、種子伝染性病害、土壌病害など、多方面の病害に効果があります。予防・治療の2つの両方で使えます。低濃度で使えるため、作物汚染が少ない薬剤です。

予防策

◆接ぎ木栽培

抵抗性の台木(トナシム、トルバム系)を使った接ぎ木苗で栽培する事で発生予防が期待できます。

◆土壌消毒で土壌中の菌核密度を下げる

薬剤による土壌消毒、有機物と太陽熱による土壌消毒の方法がありますが、どちらも大掛かりなので家庭菜園に現実的ではないかもしれません。

前者はガスタードやクロリピクリンなどの薬剤を土壌散布して消毒します。後者は土壌還元消毒法と言われるものです。太陽熱の消毒、糖蜜や米ぬかなどの有機物を組み合わせた環境に優しい薬剤を使わない土壌消毒法です。土壌に米ぬかや糖蜜などの有機物を混和した後、土壌をビニールで覆い20日間ほど地温を30度以上に保つ事で土壌の微生物を急増させ土壌を急激な還元状態にします。有機物から発生する酢酸や太陽熱と発酵熱による高温などにより病害中の増殖が抑制されます。低コスト&環境に優しい方法ですが、ドブ臭がするため住宅に近い畑ではネックになります。 ◆病気株の除去と廃棄処分 ◆高畝で水捌けの良い畝を作る

多潅水で発生しやすいため水捌けの良い畝作りを心がけましょう。

◆連作を避けた栽培計画を立てる 病原菌の残った残さから土壌を汚染し発生していくため、ナス科作物の連作を避けた栽培計画を立てる事で予防できます。


うどん粉病



菌糸状のカビにより葉っぱが白くなる病気で、どの野菜にも共通して発生します。する病気です。初夏から初秋(5〜6月、9〜11月)に被害が多く、低温(25度前後)で乾燥した環境が続くと発生します。高温の真夏には発生しません。

症状:病名の通り葉の表面にうどん粉をまぶした様な白斑(カビ)が現れます。カビが繁殖して白くなった部分は光合成が出来ず、進行すると葉が枯れて菌が他の株へも広がり被害が拡大します。うどん粉病は葉だけでなく蕾や果実にも発生します。放っておくと開花を阻害したり果実の生育不良とつながります。


原因:菌糸状のカビが原因で発生します。風により胞子が運ばれて葉に付着したり、水やりの際に感染した株近くの泥が跳ね返り胞子が付着したりして感染します。うどん粉病のカビ菌は絶対寄生菌のため生きた植物に寄生する事でのみ生存でき、生きた葉に寄生し養分を吸い取って繁殖していきます。の跳ね返りなどで。また、チッソ、カリウム不足でも発生しやすいと言われています。


対策:感染初期で広がっていなければ病変が認められた葉を除去処分し、周囲の葉への菌の付着を防ぎます。また、その段階であれば酢や重曹で作った手作りの予防薬を噴霧する事で改善へ導くこともできます。農薬に抵抗がある方もこれなら安心です。病気が進行していて株の除去を避けたい場合は農薬を検討しましょう。収穫前に容量を守って使用すれば人体に大きな影響はありません。


対策薬剤

カリグリーン水溶剤 うどん粉病、サビ病、灰色かび病などに効果があります。発病初期の散布が効果的。カリウムイオンが病原菌の細胞に入り込み、細胞内のイオンバランスを崩して細胞機能に障害を起こし病斑を消滅させます。主成分の炭酸水素カリウムは、食品や医薬品に使用されていて、人畜に安全性が高く安心。ニオイもなく収穫前日まで使用できます

ダコニール1000 かび類(糸状菌)によって起こる、うどん粉病、もち病、炭そ病、斑点病など葉が変色するタイプの広範囲の病気に効果があります。発生前から発生初期に散布すると効果的です。

予防策

◆耐性品種苗や接ぎ木栽培

うどん粉病耐性品種や接ぎ木苗を使用することで発生を防げます

◆育成環境を整える

水捌けの良い畝作りを心がけます。また、葉が多く茂っている場合は整理をして葉に適度な日当たりを確保します。

初めは株元近く片側の枝葉から症状が現れ、葉脈と葉脈の間が黄色に変色し葉のふちから上方へ巻き上がってきます。だんだんと葉全体に広がっていき、徐々に上方の枝葉にも同様の症状が広がっていきます。さらに進行すると株全体の葉がしおれて株が枯死します。病気の株を切ってみると、病気に冒された側の維管束は茶褐色に変色していることが確認できます◆肥料のあげすぎに注意する ◆薬剤や手作りの予防薬の使用 ナスに発生しやすい病気について原因と対策をご紹介しました。ナスは連作障害が起きやすい作物です。連作を避けた栽培計画、病害が出た残さを畑に残さないという事が重要です。連作をする場合は抵抗性の接ぎ木苗の使用や水捌けの良い畝作り、発生前からの薬剤散布などで発生予防をして栽培していきましょう。

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